読了しました。
南極点初到達をめぐる、ノルウェーのアムンゼン隊とイギリスのスコット隊の模様を当時の資料や本人たちの著作を元に時系列を合わせてわかりやすく書いた本です。
余分な飾りはなし。できるだけ事実に忠実に、公平な視点を以て伝えようという作者の方の気持ちが伝わる1冊でした。
わりと控えめな飾らない文章であるにもかかわらず、事実があまりに血沸き肉躍る冒険スペクタクル。一気に読んでしまいました。
アムンセンとスコット (朝日文庫) 文庫 – 2021/12/7
チャットGPTちゃんにちゃちゃっと出してもらいました。
アムンセン隊(ノルウェー)
1911年10月、ノルウェーのロアール・アムンセン率いる探検隊が南極点を目指して出発。
犬ぞりを活用し、計画的な補給と熟練したスキー技術を駆使。
1911年12月14日、アムンセン隊は世界で初めて南極点に到達。
その後、無事に帰還し、大成功を収めた。
スコット隊(イギリス)
1911年11月、イギリスのロバート・スコット率いる探検隊が出発。
ポニー(馬)や人力を多用し、補給計画も不十分だったため進行が遅れる。
1912年1月17日、南極点に到達するも、すでにアムンセン隊が先に到達していたことを知り、落胆。
帰路で悪天候と疲労により隊員全員が死亡。
スコットの日記が発見され、悲劇的な探検として広く知られることに。
結果
アムンセンは優れた準備と適切な戦略で成功し、スコットは過酷な状況と計画の不備によって悲劇に終わった。歴史的な南極探検の象徴的なエピソードとして語り継がれている。
南極点へ到達するまでに、この2隊がどのように準備し、対応し、またどの程度の”想定上の悪条件"に見舞われるかに対する備えをしたか。がわりと淡々と表現されるのにもかかわらず大興奮の1冊でした。
同じ困難に対して、リーダーの選択、隊の準備、隊そのものの人員数、隊員同士の人間関係。南極点到達に向かって、同時期に実行に移し、その結果が大きく違っていたために、比較検討するとあまりに結果は明白で。明白であるということを科学的にあらわにした1冊です。
これを読んでいると、自分の中の遠い記憶(小学校低学年から中学年くらい)が思い起こされてきて。どの本とは特定できないのですが、図書室で借りた児童用のスコット隊の悲劇についた本を読んでいる気がします。
内容も一通り、記憶の隅にあって、読んでいる間に、あ~知っているなという感覚はもちあわせていた。多分、まだ昭和の頃、テレビのドキュメンタリー仕立ての番組などでこの話を見たことがあるのだろう(この本が最初に出版された時期から考えても、本が話題になって、テレビ番組が作られた可能性はありますね)。
とはいえ、当時はスコット隊の悲劇を好意的に扱ったものを見ていたし、昭和の頃はそういう価値観の本やテレビが大半で、私自身もお涙頂戴をエンタメとして消費することが多かったと思う。
今となっては、できることは全部やって、難なくこなせたように見えても安全に帰ってくるのが一番で、悲劇を好意的に受け入れるという感覚はもはやなくて。
失敗が明白なら引き返す選択をしたいし、失敗をしない生き方が正解。
失敗して自ら悲劇を招いた人を祭り上げるようなムーブメントには参加したくないと思っています。
スコットは、その実力以上の責任を負わされて、無理な計画を進めて、失敗して、隊もろとも全滅させたダメリーダーだと感じます。でも、結局スコット自体もプロジェクトリーダーでしかなくて、もっとえらい人からやれと言われた中間管理職に他ならないんですよね。う~ん。でも?2025年時点の私の価値観では、彼の権限内で防げた事故だと思わずにはいられない。
スコット隊に一人だけ士官以外で南極点まで行ったメンバーのエドガー・エヴァンズさんがこの極限の中で、隊の中でどのような扱いをされていたのかを一人想像たくましくして苦しい気持ちになってしまった。上司が多すぎるとつらかったろうなと・・・極限状態で皆に便利使いされたら?便利使いというほどでもなくても少しづつ、少しづつ彼にだけのしかかる負担が4人の上司から積み重ねられたら?
スコットさんは、失敗の本質で取り上げられる日本のダメリーダーとも共通項が多い。
dottarabattara47.hatenablog.com
ちなみに、今では南極点のすぐそばにこのような基地があって、飛行機で行って帰ってこれるそうで・・・w。一般人が観光に行けるようなことはなさそうだけど、あまりに快適そうで、最初、パッケージツアーとか金に糸目をつけなければあるんじゃないかと思ってしまうほどの整いようでした。人類すごいね。
身体一つで行けるような場所でないことに何ら変わりはなくても、ありとあらゆる技術の進歩で南極も別世界。
とにかく一人南極ブームで、次は当然、シャクルトンに気持ちが向きまして。
Kindle版で簡単に入手できるこちらを読み始めています。副題等がうざくてエンデュアランス号の事件をビジネス書仕立てに書き立てた本かと思ったら、もともとエンデュアランス号事件を調べこんで書いた、当時の本(隊員たちに実際にインタビューができた時代)でした。
歴史的事実を楽しみたい派としては余計なお世話な副題でしたが、楽しんでいます。
エンデュアランス ──史上最強のリーダー シャクルトンとその仲間はいかにして生還したか Kindle版
このあと予想される、わたくしに降りかかりそうな苦難としては・・・
レゴのエンデュアランス号が我が家にやってきてしまうのではないかと戦々恐々?